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各種事業 分子研リポート2009 | 分子科学研究所

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(1)

大学共同利用機関である分子科学研究所は,分子科学研究推進の中核として所内外の頭脳による共同研究と設備の 共同利用を積極的に推進し,周辺分野を含めたコミュニティの世界的水準での活性化を重要な役割としている。法人 化後,研究所は様々な提案を行い,文部科学省,自然科学研究機構,日本学術振興会による公募に採択されて予算配 分を受け,多様な事業を展開している。近年の政府財政の改革に伴い,大学に於ける研究設備の老朽化に対する手当 の不十分さから,化学の分野の研究者はその研究水準の維持向上を図る上で極めて危機的な状況に曝されている。こ の危機に対処するために,平成19年度からの5カ年計画としてスタートした「化学系研究設備有効活用ネットワー クの構築」事業は,全国の大学の化学系研究者の支持を受けて,全国的な設備の相互利用を可能にするインターネッ トによる設備利用予約と利用料金の受け渡しシステムを構築し,使用困難な設備の復活再生と新規最先端設備の重点 的配置を行うものである。この事業を大学共同利用期間としての分子科学研究所が行い,全国の大学の教育研究の充 実に資すると共に,我が国の化学研究のより一層の活性化に寄与する事は重要であろう。一方で,研究所の研究活動 の飛躍的向上を図るという観点から,理化学研究所との連携融合事業「エクストリームフォトニクス」が,平成17 年度からスタートしている。これは,物理と化学の2領域にわたるフォトニクスの問題を基礎的な量子論の応用によ る分子の状態制御と先端光源開発までを含めた最先端の課題として取り組むものである。自然科学研究機構が主催す る「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業」では,分子科学研究所が主体的にまとめている「巨大計算 新手法の開発と分子・物質シミュレーション中核拠点の形成」,5機関共同で進めている「イメージング・サイエンス」 および「自然科学における階層と全体」プロジェクトを実施しており,それぞれ着実な成果を上げ進展に寄与している。 日本学術振興会が行っている多国間交流事業「アジア研究教育拠点事業」では,研究所が提案する「物質・光・理論 分子科学のフロンティア」が平成18年度より採択され,中国,韓国やタイ,マレーシア,シンガポールなど東南ア ジア各国の若手研究者の交流と育成,共同研究プログラムを積極的に実行している。また,大学ばかりでなく産業界 の研究開発の支援を行う文部科学省の先端研究施設共用イノベーション創出事業「ナノテクノロジーネットワーク」 では,「中部地区ナノテク総合支援」プロジェクトの幹事機関として名古屋大学,名古屋工業大学,豊田工業大学と ともに各種装置の共用支援を行っている。最も規模の大きな事業としては,文部科学省の「最先端・高性能スーパー コンピューターの開発利用」プロジェクトに於ける「次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発」拠 点として,ナノ分野の「グランドチャレンジアプリケーション研究」を推進している。

このような,各種事業を通して大学や産業界の研究者が分子研に集い,所内の研究者との活発な情報交換と共同研 究が実施されることによって,分子科学やその周辺分野の研究推進に大きく寄与するであろう。

5.各種事業

(2)

5-1 化学系研究設備有効活用ネットワークの構築(文部科学省)

国立大学における研究設備の老朽化等による危機的な状況を改善し,我が国の研究教育の基盤崩壊を防ぐとともに, 先導的研究を推進するため,化学系の教育研究組織を持つ全国の機関が結集し,全国的な連携調整の下に「老朽化し た研究設備の復活再生」及び「最先端研究設備の重点的整備」を行い,これらにより整備された設備及び既存の研究 設備で外部に公開可能な設備を対象として全国・地域設備活用ネットワークを構築し,大学間の研究設備の有効活用 を図ることを目的として,特別教育研究経費による「化学系研究設備有効活用ネットワークの構築」(平成19〜23 年度)がスタートした。

本 ネ ッ ト ワ ー ク に は 全 国 73 の 機 関 が 参 加 し て い る。 20 年 度 予 算 に よ っ て 19 台 の 老 朽 化 設 備 が 復 活 再 生 さ れ, 21年度は25台の設備の復活再生措置がなされた。また,21年度補正予算によって新規最先端設備の配置要求が認 められ,36台の設備に対して 16 億 5 千万円の予算が認められた。この中には,表面プラズモン共鳴分光装置や高輝 度小角X線散乱装置,光電子ナノ表面分析装置など希少なしかし重要性の高い10種類の装置が含まれており,全国 からの相互利用が期待される。また,予約課金システムのアップグレードにも常に利用者のニーズを反映させるよう な努力を行っている。平成21年度には,インターネットによる「ネットワーク利用課金システム」に各設備の管理 者が直接入って,予約の変更調整,使用時間の確定や利用料の設定(学内/学外/利用の内容別等)の操作を行う事 が可能となり,予約時間も5分刻みとなることから,利用者にも設備管理者にも使い勝手が大きく向上した。尚,学 内利用システムも取り込んだ大規模システムへと高度化が進行しており,これによって,各大学の予約システムとの 互換性(相互乗り入れ)が実現する。

22年度からは第2期中期計画時期に入ることもあり,化学系を越えたプロジェクトとして,「大学連携研究設備ネッ トワークによる設備相互利用と共同研究の促進」という新たな課題の下に,復活再生に加えて共同研究の促進という 一層の発展を指向した提案を行ったが,大学の設備は21年度補正予算によって十分な措置がなされたという判断が あったためか,例年の半額の 5000 万円が分子科学研究所の運営費交付金に組み込まれることとなった。このような 事情から,22年度の予算も復活再生を中心とするのではなく,先端設備等相互利用設備を活用した全国・地域での 複数の大学の研究者による共同研究プロジェクトを中心に執行される予定である。この共同研究によって導入設備の 一層の有効活用と研究者間のコミュニケーションの活性化が促進し,本事業の目的達成に相応しい実施体制が実現す ると期待される。

(3)

5-2 連携融合事業「エクストリームフォトニクス」 (文部科学省)

平成17年度から理化学研究所との連携融合事業として「エクストリーム・フォトニクス」を推進している。「光を 造る」,「光で観る」,「光で制御する」という3つの観点から,両研究所が相補的に協力交流することによって,レーザー 光科学のより一層の進展を図ろうとするプログラムである。分子研側からは,3つの観点のそれぞれにおいて以下の 課題を選定し,いずれも精力的に研究を推進してきた。

(1) 「光を造る」

「光波特性制御マイクロチップレーザーの開発」(平等)

「新複合フッ化物の真空紫外発光デバイスとしての探索と新 V UVフェムト秒光源の実現」(猿倉) (2) 「光で観る」

「時間・空間分解分光による固体表面・ナノ構造物質表面における反応研究」(松本)

「エクストリーム近接場時間分解分光法の開発」(岡本)

「タンパク質立体構造に基づく機能性発光分子の開発と生体機能解析システム」(小澤) (3) 「光で制御する」

「アト秒コヒーレント制御法の開発と応用」(大森)

「紫外強光子場による反応コヒーレントコントロール」(菱川)

「高強度極短パルス紫外光を用いた超高速光励起ダイナミックスの観測と制御」(大島)

これらの課題の成果は,既にScience 誌,Physical Review Letters 誌,Nature Methods 誌などの超一流の学術誌に度々 発表されただけでなく,多数の新聞各紙で取り上げられ社会的にも大きな注目を集めた。また,日本学士院学術奨励賞, 日本学術振興会賞,アメリカ物理学会フェロー表彰,文部科学大臣表彰若手科学者賞,日本化学会進歩賞,日本分光 学会奨励賞,光科学技術研究振興財団研究表彰など,多くの権威ある表彰の対象となってきた。また,マイクロチッ プレーザーの開発では,産業界との共同研究が進展した。

この他に,両研究所の研究打合せや成果報告のため,毎年2回,定期的に理研・分子研合同シンポジウムを開催し ている。17年度は,4月に理化学研究所にて第1回の合同研究会を開催した。この研究会では,各参加グループのリー ダ ー が そ れ ま で の 研 究 成 果 を 紹 介 し た 上 で 今 後 の 研 究 計 画 を 披 露 し, こ れ を 中 心 に 議 論 を 行 っ た。 こ れ に 対 し て, 11月には「分子イメージングとスペクトロスコピーの接点」を主題とした研究会を行い,より突っ込んだ議論を進 めた。18年度は,4月に理化学研究所にて第3回理研・分子研合同シンポジウムを開催した。このシンポジウムで は特に「エクストリーム波長の発生と応用」をテーマとし,テラヘルツ光やフェムト秒X線の発生と利用について議 論した。さらに,11月には「コヒーレント光科学」を主題とした第4回の研究会を行い,この方面における所外の 研究者にも講演を依頼し,より突っ込んだ議論を進めた。19年度は,4月に理化学研究所にて「バイオイメージング」 をテーマに第5回シンポジウムを開催した。ここでは,高感度レーザー顕微鏡やテラヘルツ分光を利用した生体系の イメージングについて議論した。さらに,11月には「先端光源開発と量子科学への応用」を主題とした第6回シン ポジウムを行い,高強度超短パルスレーザーを始めとする先端レーザー光源の開発と,それらを原子分子クラスター あるいは表面ダイナミクスの観察や制御へと応用した研究成果と今後の展望について議論した。20年度は,5月に 理化学研究所にて「イメージング」をテーマに第7回シンポジウムを開催した。ここでは,超高速分子イメージング; 生体分子イメージング;テラヘルツイメージングについて議論した。さらに,11月には「U l traf ast. meets. ul tracol d」 を主題とした第8回シンポジウムを行い,超高速コヒーレント制御や極低温分子の生成,およびそれらの融合が生み

(4)

出す新しい科学に関する研究成果と将来展望について議論した。21年度は,5月に理化学研究所にて「光で繋ぐ理 研の基礎科学」をテーマに第9回シンポジウムを開催した。ここでは,これまでに本事業によって推進された理研の 光科学研究の成果を総括するとともに,今後の展開についての意見交換が行われた。さらに,11月には蒲郡で「凝 縮系における量子の世界」と題した第10回シンポジウムを行い,固体やナノ構造体の量子性を対象にした新しい研 究領域の可能性について議論した。いずれのシンポジウムにおいても,両研究所内外の研究者に講演を依頼し,関連 分野の先端について深い議論を行った。いずれのシンポジウムにおいても,両研究所内外の研究者に講演を依頼し, 関連分野の先端について深い議論を行った。

また,このプログラムを中心に,所内に日常的な議論の場としての光分子科学フォーラムを設け,光分子科学の進 展を図っている。

一方,特別教育研究経費の枠内で推進されてきた本事業の予算は,21年度に行われた事業仕分け等の結果を受けて, 22年度以降,運営費交付金化されるとともに予算減額が予定されている。

(5)

5-3 分野間連携による学際的 ・ 国際的研究拠点形成事業 (自然科学研究機構)

5-3-1 概要

自然科学研究機構では,新分野創成型連携プロジェクトとして「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業」 を行っている。これは,機構内で2月に公募され,審査によって採択課題が決められ,年度末に評価を行っている。

分子科学研究所からは,研究所が主体的にまとめている「巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中 核拠点の形成」,5機関共同で進めている「イメージング・サイエンス」および「自然科学における階層と全体」プ ロジェクトに多くのメンバーが参加している。またこの他に,少人数のグループ研究が走っている。「自然科学にお ける階層と全体」では,第5回シンポジウムを T K P 熱海研修センターで開催した。実験(観測)と理論(シミュレー ション)の双方から「ミクロとマクロを繋ぐ階層連結のシミュレーション科学」を中心として,生物から宇宙に至る スケールの大きな自然の中で普遍的な法則と共通した現象の探索を紹介する発表がなされた。

5-3-2 巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中核拠点の形成

本プロジェクトでは,方法論の開発から大規模計算にいたる計算科学研究の中核拠点を目指し,機構内各研究機関 ならびに他機関のメンバーにより,分子科学,核融合科学,生命科学,天文学における理論・計算科学分野の方法論 の共有・融合として連携推進課題を推進してきた。さらに,連携推進課題の基盤研究として,各分野におけるナノレ ベルの物質構造・機能,磁気リコネクション,銀河衝突等の理論・計算科学研究の方法論の開発・応用研究に関する 連携課題を推進した。また,連携研究会,中核拠点セミナー,関連学会等の共催を進めるとともに,理論・計算科学 研究分野の人材育成を目的に,大学院生・若手研究者を対象とした講習会も開催した。

(1) 連携研究

連携推進課題(3課題)(*責任者)

・巨大計算に向けた粒子シミュレーション手法の開発(名大・岡崎

,分子研・平田,永瀬,斉藤,核融合研・堀 内,天文台・富阪,東大・北尾,産総研・森下)

・分子多量体形成と生理機能(基生研・望月

,生理研・永山,分子研・平田,名大・岡崎,東大・北尾)

・物質・電磁場相互作用系のシミュレーション(分子研・信定

,米満,斉藤,江原,柳井,奥村,核融合研・洲 鎌,東北大・森田)

連携課題(16課題)

・分子の励起状態と化学反応に関する理論的研究(分子研・江原)

・新しい分子動力学シミュレーション手法の開発(分子研・奥村)

・分子動力学計算に基づく凝縮系ダイナミックス(分子研・斉藤)

・ナノ分子の量子化学計算(分子研・永瀬)

・電磁場と露に相互作用した多電子ダイナミックスの解析(分子研・信定)

・3次元 R IS M による分子認識(分子研・平田)

・量子化学の先進的分子モデリング手法開発と多参照電子状態の解明(分子研・柳井)

・量子古典結合多粒子系の非平衡集団運動制御の理論(分子研・米満)

・プラズマ大規模シミュレーションのための効率的並列計算手法開発(核融合研・堀内,洲鎌)

・概日リズム振動の生体分子反応シミュレーション(基生研・望月)

(6)

・ミトコンドリアの energetics.simulation(生理研・永山)

・輻射輸送計算を用いた星間化学進化の研究(天文台・富阪)

・界面和周波発生分光の理論計算手法の開発(東北大・森田)

・第一原理分子動力学計算による液体及びアモルファスのポリモルフィズム(産総研・森下)

・生体超分子の立体構造変化と機能(東大・北尾)

・両親媒性分子水溶液の大規模分子動力学計算(名大・岡崎) (2) ワークショップ

・第6回連携シンポジウム. 2 月 15 日

・分子・物質シミュレーション中核拠点セミナー. 第 35 回〜第 40 回

・討論会,学会の共催

 理論化学討論会,分子シミュレーション討論会 (3) 人材育成

・第5回分子・物質シミュレーション中核拠点形成事業人材育成講座

 「第3回分子シミュレーションスクール—基礎から応用まで—」. 12 月 15 日 –18 日 (4) 実施体制

・機構内12グループ. 理論・計算分子科学研究領域,天文台,核融合研,生理研,基生研

・機構外4グループ. 東北大,産総研,東大,名大

5-3-3 イメージング・サイエンス

(1) 経緯と現状

研究所の法人化に伴い5研究所を擁する自然科学研究機構が発足し,5研究所をまたぐ新研究領域創成の一つのプ ロジェクトとして「イメージング・サイエンス」が取り上げられることとなった。以下に,その経緯と現状について 述べる。

平成16年度に機構が発足した後,研究連携室で議論がなされ,機構内連携の一つのテーマとして「イメージング・ サイエンス」を立ち上げることが決定された。連携室員の中から数名の他に,各研究所からイメージングに関連する 研究を行っている教授・准教授1〜2名が招集され,「イメージング・サイエンス」小委員会として,公開シンポジ ウムその他プロジェクトの推進を担当することとなった。

平成17年8月の公開シンポジウム(後述)の後,小委員会において,本プロジェクトの具体的な推進について議 論を行った。この機会に,各研究所が持つ独自のバックグラウンドを元に,それらを結集して,広い分野にわたる波 及効果をもたらすような,新しいイメージング計測・解析法の萌芽を見いだすことが理想,という議論がなされた。 それに向けた方策として,機構内の複数の研究所にまたがる,イメージングに関連する具体的な連携研究テーマをい くつか立てる案を連携室に提案したが,予算の問題等もあってこれは実現しなかった。

現状では,機構の特別教育研究経費「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成」の新分野創成型連携プロジェ クトの項目として,イメージングに関連した研究所をまたがる提案が数件採択されている(「イメージング・サイエン ス—超高圧位相差電子顕微鏡をベースとした光顕・電顕相関3次元イメージング—」など)。これが上述の提案に 代わるものとして,「イメージング・サイエンス」に係る具体的な機構内連携研究を推進している。平成20年度には, 岡崎統合バイオサイエンスセンター(生理研)の永山教授を中心に再編された小委員会が招集され,国立天文台に設

(7)

置された一般市民向け立体視動画シアター「4D 2U」(4-dimensional.to.you)を利用した,広報コンテンツ作成に関する 検討が開始された。5研究機関がもつイメージングデータを元に,機構の研究成果を一般市民向けに解説する立体動 画集の制作を目論んでいる。同時に,イメージングを中心とした機構内連携の新たな展開について議論を行っている。 平成21年度に機構本部の下に,5機関が連携して自然科学の新しい分野や問題を発掘することを目指して,新分野 創成センターが設置され,その中にブレインサイエンス研究分野及びイメージングサイエンス研究分野がおかれた。 イメージングサイエンス研究分野は5研究機関から1名ずつの併任教授が就任した。また外部からの任期付き客員教 授1名及び実動部隊としての博士研究員若干名を公募し,上述のようなイメージングコンテンツの新たな表示法の開 発を推進することとなった。現在までに客員教授及び博士研究員1名の選考が終わり,実際の活動を開始している。 (2) 実施された行事

このプロジェクトの具体的な最初の行事として,各研究所のイメージングに関わる興味の対象と研究ポテンシャル を,5研究所が互いに知ることを目的として,「イメージング・サイエンス」に関する公開シンポジウムを開催する こととなった。

平成17年8月8日−9日に,「連携研究プロジェクト Imaging.S cience 第1回シンポジウム」として,公開シンポジ ウムが岡崎コンファレンスセンターで開催された。このシンポジウムでは,天文学,核融合科学,基礎生物学,生理学, 分子科学におけるイメージング関連研究に関する,機構内外の講師による16件の講演,及び今後の分野間連携研究 に関する全体討論が行われた。参加者は機構外36名,機構内148名,大学院生80名,合計264名を数えた。また, 講演と全体討論の内容は,175 ページのプロシーディングス(日本語)としてまとめられ,同年12月に発行された。 この機会によって機構内のイメージング・サイエンス関連研究に関する研究所間の相互理解が進み,その後の機構内 連携研究の推進に相当に寄与したと考えられる。

平成18年3月21日には,立花隆氏のコーディネート,自然科学研究機構主催で「自然科学の挑戦シンポジウム」 が東京・大手町で開催された。これは,一般の観客を対象に,機構の研究アクティビティーをアピールすることを目 的として,立花氏が企画して実現したもので,当日は約600名収容の会場がほぼ満席となる一般参加者があった。こ のシンポジウムの中で,「21世紀はイメージング・サイエンスの時代」と称して,イメージングを主題とするパネル ディスカッションが組まれた。ここにはパネラーとして「イメージング・サイエンス」小委員会委員を中心とする講 師によって,5研究所全てから,各研究所で行われているイメージング関連の研究の例が紹介され,最後に講師が集 まりパネルディスカッションが開かれた。このシンポジウムの記録の出版は諸々の事情で遅れていたが,平成20年 度にクバプロから出版された。

平成18年12月5日−8日には,第16回国際土岐コンファレンス(核融合科学を中心とする国際研究集会)が核 融合研究所主催で土岐市において開催された。この会議ではサブテーマが“ A dvanced. Imaging. and. Plasma. D iagnostics” とされ,プラズマ科学に限らず,天文学,生物学,原子・分子科学を含む広い分野におけるイメージング一般に関す るシンポジウムとポスターセッションが企画された。分子科学研究所からも,数名が参加し,講演及びポスター発表 を行った。また平成19年8月23日−24日には,「画像計測研究会2007」が核融合科学研究所一般共同研究の一環 として,核融合科学研究所において開催された。平成20年11月10日−13日には,第39回生理研国際シンポジウ ムとして,“ F rontiers.of.B iological.Imaging—S ynergy.of.the.A dvanced.T echniques” が開催され,機構内のイメージングに 関わる研究者も数名(分子研1名)が講演を行った。平成22年3月21日には,再び立花隆氏のコーディネートによ る自然科学研究機構シンポジウム(東京で開催予定)において,イメージングサイエンスを取り上げる予定となり, その準備が進んでいる。

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5-3-4 自然科学における階層と全体

平成21度シンポジウムが静岡県熱海市の T K P 熱海研修センターにおいて12月24・25日の2日間にわたり開催 された。本シンポジウムは,新しい学問分野の創成を目指して「階層と全体」をキーワードに,それぞれ異なる専門 分野に属する研究者が相互交流する場を提供するものであり,今回で通算5回目を迎えた。今回のシンポジウムは, 第1部(複雑系の理論モデル),第2部(生命体の階層構造・集団運動),第3部(地球・宇宙における階層性と構造 形成)および第4部(分子・生命現象のモデル・シミュレーション)から構成され,自然科学研究機構の5つの研究 機関の担当者から推薦された機構内外の14名の研究者による講演が行われ,活発な討論がなされた。

第1部(複雑系の理論モデル)では,松下貢教授(中央大学),阿部純義教授(三重大学)および洲鎌英雄教授(核 融合科学研究所)が,講演を行った。松下教授は「複雑系の統計性—自然科学から社会科学まで」という講演の中で, 老人病の介護期間,都道府県や市町村人口,年齢別の身長や体重等,様々な例を挙げ,複雑系の統計性として対数正 規 分 布 が 最 も 自 然 な 分 布 関 数 で あ る こ と を 示 し た。 阿 部 教 授 の 講 演「U ni v ersal. and. nonuni v ersal. di stant. reg i onal. correlations.in.seismicity.in.J apan:.R andom-matrix-theory.approach」では,地震活動における事象の相互相関の解析にラン ダム行列理論を用いることによって,遠距離にありながら事象が互いに非自明に相関している地域のネットワークを 構成できることが示された。須鎌教授は「プラズマの巨視的モデルと微視的モデル」という講演の中で,多岐にわたっ て混在するプラズマ現象を記述するため,興味のある物理過程やその特徴的な空間・時間スケールに応じて磁気流体 モデルやジャイロ運動論的モデル等の異なる理論モデルが第一原理から導き出され,理論解析・シミュレーションに 用いられてきたことを,核融合プラズマについて紹介した。

第2部(生命体の階層構造・集団運動)では,宮川剛教授(藤田保健衛生大学),川口泰雄教授(生理学研究所), 西森拓教授(広島大学)および西成活裕教授(東京大学)が,講演を行った。宮川教授は「精神疾患の中間表現型と しての未成熟歯状回:多因子疾患における階層と全体」という講演で,多くの系統の遺伝子改変マウスについて遺伝子・ 脳・行動の関係を調べることにより,歯状回が未成熟なマウスの海馬が統合失調症患者の死後脳の海馬と遺伝子・タ ンパク発現のパターンの点で似ていることを示し,「未成熟歯状回」という階層を縦断して生じる現象を例にとり, 多因子疾患の一つである精神疾患がどのように生ずるのかについての可能性について論じた。川口教授の講演「大脳 皮質の階層構造」では,哺乳類がもつ発達した大脳新皮質における単一ニューロンの構造分化,多様な構成ニューロン, それらが作る局所回路,領域間結合といった各階層構造をつなぐ原理の解明に向けた研究についての最新の動向が解 説された。「群れの振る舞いと機能—アリの集団運動を中心として」と題する講演で,.西森教授は,数理模型を用い たアリの集団行動の研究について紹介し,実験・観察事実との比較により,アリの集団採餌におけるトレイル形成の 問題や集団内での役割分担の問題を考察した。.西成教授は,「急がば回れ—渋滞のなくなる日—」という講演で, 高速道路,通勤電車,工場の在庫等,様々なところで見られる渋滞現象を考える科学「渋滞学」について延べ,多彩 な映像を交えながら,最新の数理科学を用いた渋滞の解消方法について紹介した。

第3部(地球・宇宙における階層性と構造形成)では,嶺重慎教授(京都大学)と陰山聡教授(神戸大学)が,講 演を行った。嶺重教授は,「天体現象における self-organized. criticality(S OC )」と題する講演で,ブラックホールに落 ち込むガスの流れに自己組織化臨界(S elf-organized.criticality)モデルを適用することにより,1/f的な放射光度変動パ

ワースペクトルや光度曲線に見られるフレア(なだれ)のべき分布など,観測の諸特徴を再現できることを示し,宇 宙物理研究で随所に現れるフラクタル,1/f的なゆらぎや対数正規分布について解説した。「地球ダイナモにおける速

度場・磁場・電流場構造の形成」という講演で,陰山教授は,地球磁場の起源解明を目的としたスーパーコンピュー タを用いた大規模な地球ダイナモシミュレーションについて詳しく述べ,シミュレーションによる双極子磁場の生成

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とその逆転現象の再現や,最近新たに発見されたシート状の流れ場構造,コイル状の電流構造や大規模な螺旋型の磁 場構造の生成等のシミュレーション結果を報告した。

第4部(分子・生命現象のモデル・シミュレーション)では,中井浩巳教授(早稲田大学),高田彰二准教授(京 都大学),柳田敏雄教授(大阪大学),黒田真也教授(東京大学)および佐藤昌直助教(基礎生物学研究所)の講演が 行われた。中井教授の講演「非経験的シミュレーションの高速化手法の開発」では,まず,量子化学計算の大規模化・ 高精度化に対する取り組みとして,分割統治型線形スケーリング法が紹介され,次に,量子化学計算と分子シミュレー ションを組み合わせた非経験的シミュレーションについて説明があり,計算コストの問題に対する自己無撞着場計算 の高速化法等が紹介された。「生体分子システムのマルチスケールモデリング」という講演で,高田准教授は,原子 レベルから細胞レベルまで,階層的にデザインされている生体分子システムの一つの代表例である生体分子モーター の作動原理について,3つの階層の理論・シミュレーション研究の方法(化学反応を扱う電子状態理論計算,原子の ゆらぎや運動を観察するための原子レベルの分子動力学シミュレーション,そして大規模な運動を再現するための粗 視化シミュレーション)を解説した。柳田教授は,「ゆらぎと生命機能:超複雑システムをゆらぎで省エネ制御する 生物」と題する講演で,筋肉の分子モーターや人間の脳等の例を挙げながら,生体がゆらぎを運動と制御に使って省 エネしていることを解説し,ゆらぎ利用の仕組みを使えうことにより複雑なロボットや情報網のコントロールを従来 の方法の 1000 分の 1 のエネルギーで行えることを示した。黒田教授の講演「生命分子ネットワークの情報コード」 では,生命科学における多数の分子とその相互作用のネットワークの具体的な例として細胞の増殖や分化を制御する E R K 経路や A kt 経路の特性とその原理について実験とシンプルなモデルを用いた解析が紹介され,それぞれの経路が 刺激の時間パターンの中にある情報を読み解き,下流に異なる信号パターンを伝達できる点に焦点を当てた,生命現 象の情報とそのコーディングが解説された。「植物免疫シグナル伝達のネットワークモデリング」と題して,佐藤助 教は,シロイヌナズナを用いた植物免疫シグナル伝達のネットワークの研究について講演を行い,遺伝子間のシグナ ル伝達をモデル化するネットワークグラフを作成して得られた植物の生存メカニズムに関する新たな知見を紹介し た。

最後の全体討論では,シンポジウムの総括として本プロジェクトのようにユニークな分野間交流の重要性が再認識 され,また「階層と全体」を観点とした機構連携に関する次年度以降の見通しについて,討論が行われた。

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5-4 アジア研究教育拠点事業「物質・光・理論分子科学のフロンティア」

(日本学術振興会)

21世紀はアジアの時代と言われている。分子科学においても欧米主導の時代を離れ,新たな研究拠点をアジア地 域に構築し,さらにはアジア拠点と欧米ネットワークを有機的に接続することによって,世界的な研究の活性化と新 しいサイエンスの出現が期待される。

日本学術振興会は,平成17年度より新たな多国間交流事業として,アジア研究教育拠点事業(以下アジアコア事業) を開始した。本事業は「我が国において先端的又は国際的に重要と認められる研究課題について,我が国とアジア諸 国の研究教育拠点機関をつなぐ持続的な協力関係を確立することにより,当該分野における世界的水準の研究拠点の 構 築 と と も に 次 世 代 の 中 核 を 担 う 若 手 研 究 者 の 養 成 を 目 的 と し て( 日 本 学 術 振 興 会 ホ ー ム ペ ー ジ よ り 抜 粋:http: // www.jsps.go.jp/j-bilat/acore/01boshu_ acore.html)」実施されるものである。分子科学研究所は,「物質・光・理論分子科 学のフロンティア」と題して,分子科学研究所,中国科学院化学研究所,韓国科学技術院自然科学部,台湾科学院原 子分子科学研究所を4拠点研究機関とする日本,中国,韓国,台湾の東アジア主要3カ国1地域の交流を,アジアコ ア事業の一環として平成18年度にスタートさせた。アジアコア事業の特徴の一つとして,互いに対等な協力体制に 基づく双方向交流が挙げられる。本事業においても,4拠点研究機関のそれぞれがマッチングファンドを自ら確保し ており,双方向の活発な研究交流が着実に進展している。また,4拠点研究機関以外の大学や研究機関が研究交流に 参加することも可能である。平成21年度までの4年間の活動の概要を以下にまとめる。

(1) 共同研究

物質分子科学においては,π電子系有機分子を基盤とする機能性ナノ構造体の構築と機能開拓,先端ナノバイオエ レクトロニクス,自己組織化金属錯体触媒の開発(以上,中国との共同研究),超高磁場 NMR を用いた蛋白質−ペプ チド相互作用の精密解析(韓国,台湾,香港との共同研究),バッキーボウルに関する合成・物性研究(台湾との共 同研究),新規遷移金属錯体触媒システムの開発(韓国との共同研究)が進展した。

光分子科学においては,特異なナノ分子システムのナノ光学,テラヘルツ時間領域分光法を用いたジシアノビニル 置換芳香族分子の分子間振動および構造(以上,中国との共同研究),コヒーレントレーザー分光による反応ダイナミッ クスの解明(台湾との共同研究)が進展した。

理論分子科学においては,生体分子中における量子過程の計算機シミュレーション,ナノ構造体における光学応答 理論(以上,台湾との共同研究)が進展した。

(2) 共同セミナー

18年度は,「中国・日本グリーン化学合成シンポジウム」(中国・北京),「第1回物質・光・理論分子科学のフロ ンティア冬の学校」(中国・北京),「第1回全体会議」(日本・岡崎)が開催された。

19年度は,「中国・日本機能性分子の合成と自己組織化シンポジウム」(中国・北京),「日中ナノバイオ若手研究 者交流」(中国・北京),「有機固体の電気伝導と光伝導に関する日中合同セミナー」(中国・北京),「先端レーザー分 光シンポジウム」(日本・神戸),「次世代触媒創製を目指した機能物質シンポジウム」(中国・北京),「第2回物質・光・ 理論分子科学のフロンティア」冬の学校(日本・岡崎),「第2回全体会議」(韓国・デジョン)が開催された。

20年度は,「韓日生体分子科学セミナー—実験とシミュレーション」(韓国・ソウル),「中日機能性超分子構築シ ンポジウム」(中国・北京),「ナノケミカルバイオロジーアジアコアシンポジウム」(日本・岡崎),「次世代触媒創製

(11)

を目指した機能物質シンポジウム」(韓国・デジョン),「元素の特性に基づいた分子機能に関する日中シンポジウム」(中 国・北京),「第3回物質・光・理論分子科学のフロンティア」冬の学校(台湾・台北),「第3回全体会議」(中国・ 北京)が開催された。

21年度は,「第2回日韓生体分子科学セミナー—実験とシミュレーション」(日本・名古屋),「日中機能性超分子 構築シンポジウム」(日本・札幌),「日韓分子科学シンポジウム「物質分子科学・生命分子科学における化学ダイナ ミクス」」(日本・淡路島),「第4回物質・光・理論分子科学のフロンティア」冬の学校(韓国・ソウル),「中日先端 有機化学シンポジウム」(中国・上海),「第4回全体会議」(台湾・台北)が開催された。

(12)

5-5 ナノテクノロジーネットワーク事業「中部地区ナノテク総合支援」

(文部科学省)

5-5-1 概要

分子科学研究所は,名古屋大学,名古屋工業大学,豊田工業大学の愛知県内機関と連携して,文部科学省の先端研 究施設共用イノベーション創出事業・ナノテクノロジーネットワークプロジェクトを受託し,中部地区ナノテク総合 支援事業を展開している。中部地区にナノテクノロジー総合支援拠点を形成し,ナノ計測・分析(分子研・名工大), 超微細加工(名大・豊工大),分子・物質合成(分子研)の3つの指定領域にわたって,超高磁場 N M R ,先進電顕等 の最先端機器利用,有機・生体関連分子等の設計合成評価,最先端設備技術を用いた半導体超微細加工等を総合的に 支援している。特に,各要素単体の支援に留まらず,4機関の特徴を活かした連携融合支援を推進している。

分子研では,分子スケールナノサイエンスセンターが母体となり,超高磁場 N M R ,300k V分析透過電子顕微鏡, 時空間分解近接場光学顕微鏡,紫外磁気円二色性光電子顕微鏡などの先端機器利用や,有機・生体関連分子等の設計 合成評価,大規模量子化学計算支援を実行している。今年度は協力研究30件,施設利用36件(2月3日現在)を採 択し,うち協力研究20件,施設利用22件は実施した(来所予定確定分を含む)。所内利用は29件である(1月16 日現在)。

表1に分子科学研究所が担当する支援要素の一覧,表2に平成21年度採択課題一覧を示す。支援は,担当研究者 と共に研究を進めてゆく協力研究と,装置に関する十分な知識と経験を有する研究者が随時の申し込みによって当該 装置を利用する施設利用の何れかの申し込みを通して行われる。課題申請等の詳細は http://nanoi ms.i ms.ac.j p/ にあり, 本務の共同利用と同様に,通常申請(年2回)と随時申請がある。申請は分子スケールナノサイエンスセンター運営 委員会の下部組織であるナノネット小委員会で審査される。本務の共同利用と異なり,本事業では産業界からの申請 も無償(ただし結果の公開が義務付けられる)で幅広く受け付けている。

表1 支援装置・プログラム一覧(分子科学研究所担当分)

支援装置・プログラム 装置・プログラムの概要 支援責任者 所属

近 接 場 分 光 イ メ ー ジ ン グ 支援(S NOM)

新 規 光 物 性,コヒーレ ント 光 制 御, 超 高 速 セ ン サ ー, 光加工・メモリ,エネルギー情報 伝達,ナノデバイス 等に向けたフェムト秒時間分解近接場顕微鏡支援。空 間分解能 50. nm,励起光 T i : sapphi re(780–920. nm. 100. fs)または各種CW。透過,ラマン,非線形に対応。超 高速分光を兼備した世界的に類のないオリジナル機器。

岡本裕巳教授 光 分 子 科 学 研 究領域

高 分 解 能 透 過 分 析 電 子 顕 微鏡支援(T E M)

ナノ粒子などの構造および電子状態解析のための電界 放 出 型 エ ネ ル ギ ー フ ィ ル タ ー 高 分 解 能 透 過 電 子 顕 微 鏡。J E OL J E M-3200,粒子像分解能 0.17. nm,格子像分 解能 0.10. nm。走査像観察,nm 領域の元素分析,液体 窒素冷却も可能。主に施設利用に対応。

西 信之教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

(13)

磁 気 光 学 表 面 ナ ノ 磁 性 評 価支援

新規磁性材料・ナノ磁性体の磁気特性観測を目的とし た紫外磁気円二色性光電子顕微鏡(U V . M C D . P E E M) と超伝導磁石X線磁気円二色性(X M C D )計測支援。 UV . MC D . PE E M は当グループ発見に基づく全く独創的 な機器。空間分解能 50. nm,超高速時間分解計測にも 対応予定。超伝導 X M C D は U V S OR 利用,7. T ,2. K 。 他に超高真空磁気光学 K err 効果測定装置(0.3.T ,100.K ) も提供。

横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

集 束 イ オ ン ビ ー ム 加 工 と 走査電子顕微鏡支援(S E M/ F IB )

集束イオンビーム加工と走査電子顕微鏡を提供。主に 施設利用に対応。

横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

X線光電子分光支援

(E S C A )

汎用のX線光電子分光器(Al,Mg-Ka線利用)を提供。 施設利用として気軽に利用いただける。

横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

分 子 レ ベ ル 触 媒 設 計 と 構 造解析支援

各種固体触媒表面の設計手法により,分子レベルで固 体 触 媒 表 面 の 構 造 を 設 計 し, ま た, 固 体 N M R , 赤 外 分光,ラマン分光,X A F S 等の各種分光法を用いた固 体触媒の構造解析の支援,特に,触媒反応が進行して いるその場で in-situ 構造解析を重点的に支援する。

唯美津木准教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

有機半導体デバイス・評価 支援

有機半導体を用いたデバイスや有機太陽電池の作製・ 評価を支援。結晶析出昇華精製装置,真空蒸着装置に よるデバイス作製,擬似太陽光源を用いた太陽電池特 性評価,S PM,X PS /U PS ,S E M,ミクロトーム等によ る有機半導体薄膜のナノ空間・電子構造の評価が可能。

平本昌宏教授 分 子 ス ケ ー ル ナ ノ サ イ エ ン スセンター

ナ ノ バ イ オ 素 子 機 能 形 態 解析支援(生体 T E M)

有機材料・ナノバイオ素子等の形態と機能を解析する ための高分解能透過電子顕微鏡 i n. si tu 観察支援。独創 的で世界的にも例のない位相差法を備えた生体関連物 質に特化した透過電子顕微鏡。電子顕微鏡元素イメー ジング法も併用可能。

永山國昭教授 生理研

超高磁場 N M R ナノ計測支 援

920M H z. N M Rに よ る 難 結 晶 蛋 白, 固 体 ナ ノ 触 媒, 有 機 − 無 機 複 合 コ ン ポ ジ ッ ト, カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ, 巨大天然分子などの精密構造解析支援。現状世界最高 性 能 の 920M H z. N M R 。 固 体, 多 次 元, 3 重 共 鳴 に も 対応。

加藤晃一教授 横山利彦教授

生 命・ 錯 体 分 子 科 学 研 究 領 域

大規模量子化学計算支援 ナノ分子系の構造・電子状態・機能の研究およびこれ らの設計と合成の高効率化のための高精度大規模量子 化学計算シミュレーション。クラスター PC 。

永瀬 茂教授 理 論・ 計 算 分 子 科 学 研 究 領 域

機 能 性 有 機 ナ ノ 材 料 設 計 支援

機能性有機ナノ材料,金属半導体クラスター,生体系 を規範とした有機ソフトナノ分子などの合成経路探索 設計。横山教授,鈴木・永田・櫻井准教授が各専門分 野の分子物質に対応。

鈴木敏泰准教授 永田 央准教授 櫻井英博准教授

分 子 ス ケ ー ル ナ ノ サ イ エ ン スセンター

(14)

ポルフィリンオリゴマーの立体構造と電子状態の解明 窒化物半導体のナノ構造作製に関する研究

S iC 表面分解法により生成したカーボンナノチューブの構造特性に関す る研究

高密度金属ナノ粒子内包ナノ材料を利用する新規高効率触媒の開発 複合糖質の超高磁場 NMR 装置による構造解析

高周期典型元素を骨格に有する特異なπ電子系の構築とその電子状態及 び物性の解明

920MHz 超高磁場 NMR によるアミロイドβペプチドの重合開始機構の構 造生物学的基盤の解明

920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いたタンパク質複合体の構造解析 920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いた自己集合性錯体の構造解析 フラーレン・遷移金属化合物のX線磁気円偏光二色性測定. 高分解能電子顕微鏡による炭素系超潤滑物質の構造の解明

ナノギャップ電極を用いた有機分子のキャリアー伝導機構に関する研究 ケージ構造を有する新規機能分子の創製

マイクロ波選択加熱による非平衡動的過程を応用したナノ物質創成実験 研究

機能性有機分子の表面二次元構造の研究 有機金属ナノクラスターの創製:構造と機能制御

T wo-photon.photoemission.magnetic.circular.dichroism.in.C o/Pt(111)

宇 野  英 満 丸 山  隆 浩 丸 山  隆 浩. 関   修 平 山 口  芳 樹 斎 藤  雅 一. 柳 澤  勝 彦. 水 島  恒 裕 佐 藤  宗 太 松 本  吉 弘. 三 浦  浩 治 根 岸  良 太 樋 口  昌 芳 高 山  定 次. 小 川  琢 治 日 野  和 之 H..J ..E lmers 愛媛大学総合科学研究支援センター

名城大学理工学部 名城大学理工学部. 大阪大学大学院工学研究科 独立行政法人理化学研究所 埼玉大学大学院理工学研究科. 国立長寿医療センター研究所. 名古屋市立大学大学院薬学研究科 東京大学大学院工学系研究科 日本原子力研究開発機構先端基 礎研究センター

愛知教育大学教育学部

(独)理化学研究所

(独)理化学研究所

核融合科学研究所連携研究推進 センター

大阪大学大学院理学研究科 愛知教育大学教育学部 Institute.for.Physics,.J ohannes. Gutenberg.University.(Mainz,.Germany)

. 課 題 名(後期). 支援装置. 代 表 者

ケージ構造を有する新規機能分子の創製

ポルフィリンオリゴマーの立体構造と電子状態の解明

マイクロ波選択加熱による非平衡動的過程を応用したナノ物質創成実験 研究

アルコールガスソース法を用いた低温成長カーボンナノチューブの構造 評価

カーボンナノチューブ・金属界面状態に関する研究 機能性有機分子の表面二次元構造の研究

920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いた自己集合性錯体の構造解析 920MHz 超高磁場 NMR によるアミロイドβペプチドの重合開始機構の構 造生物学的基盤の解明

ナノギャップ電極を用いた有機分子のキャリアー伝導機構に関する研究 920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いたタンパク質複合体の構造解析 高周期元素の特性を活かした新規ナノスケール分子の開発 X -ray.magnetic.circular.dichroism.of.F eC o/R h(001).and.F e/A g(116). マイクロ波による単層カーボンナノチューブの簡便分離法の開拓

樋 口  昌 芳 宇 野  英 満 高 山  定 次. 丸 山  隆 浩. 丸 山  隆 浩 小 川  琢 治 佐 藤  宗 太 柳 澤  勝 彦. 根 岸  良 太 水 島  恒 裕 時 任  宣 博 Marek. Przybylski 前 田   優

(独)理化学研究所 愛媛大学理工学研究科 核融合科学研究所連携研究推 進センター

名城大学理工学部. 名城大学理工学部 大阪大学大学院理学研究科 東京大学大学院工学系研究科 国立長寿医療センター研究所.

(独)理化学研究所

名古屋市立大学大学院薬学研究科 京都大学化学研究所

Max-Planck.Institut.(Halle,. Germany)

東京学芸大学教育学部

5-5-2 2009 年度採択課題一覧(分子科学研究所担当分)

(1) 協力研究

. 課 題 名(前期). 支援装置. 代 表 者

有機材料 E S C A T E M. 有機材料 NMR 量子計算. NMR . NMR NMR 磁気光学. T E M 有機材料 有機材料 T E M. 有機材料 T E M 磁気光学

有機材料 有機材料 T E M. T E M. E S C A 有機材料 NMR NMR . 有機材料 NMR 量子計算 磁気光学. 量子計算

(2) 施設利用

. 課 題 名(前期). 支援装置. 代 表 者

超高磁場固体 NMR によるラセン高分子の動的構造解析 発行性シリコンナノクラスターの構造評価

固体 NMR によるゴムの加硫機構解明,劣化メカニズム解明 植物に含まれる微量不安定ポリフェノール類の構造研究 Pt 細線加工と観察

各種電子デバイス開発時のメカニズム解明および最適技術の確立. リボヌクレオチド二量体の合成とヌクレオチド担持カーボンナノホーン の T E M 観察

平 沖  敏 文 根 岸  雄 一 小 林  将 俊 吉 田  久 美 伊 藤  俊 幸 浅 井   正. 三 本  晶 子. 北海道大学大学院工学研究科

東京理科大学理学部 住友ゴム工業(株)

名古屋大学大学院情報科学研究科 テラベース(株)

ソニーイーエムシーエス(株) 幸田テック

高知大学医学研究科. NMR

T E M NMR NMR S E M/F IB S E M/F IB . 生体 T E M.

(15)

. 課 題 名(後期). 支援装置. 代 表 者 F IB を用いた位相差電子顕微鏡用 A B 位相板の作成と F E -S E M による位

相板の観察

ナノ領域の特異現象と 46 億年前の微粒子形成

未利用植物より単離した多環性アルカロイドの構造研究

セメント硬化体内水分子の動的存在状態および A 1 の存在状態の解明 磁気記録用パターン媒体の研究

カルシウムハイドロシリケートの微細構造解析 超高磁場固体 NMR によるラセン高分子の動的構造解析 超伝導体および熱電材料の微形態観測

機能性遷移金属酸化物中の遷移金属イオンの価数とスピン状態

ベンゼンと酸素からのフェノール直接合成用担持レニウム触媒の構造解析 フッ化物薄膜を用いた紫外線検出器開発

固体 NMR によるゴムの加硫機構解明,劣化メカニズム解明 Pt 細線加工と観察

合成ヘムーチオレート錯体のイオン化エネルギーに及ぼすNH···S 水素結 合の効果

チオラート保護金パラジウムニ成分クラスターの構造評価

大電流パルススパッタを用いたナノ構造制御成膜法による C r2N 皮膜の構 造解析および評価

貴金属ナノ構造体の形状・化学分析 フタロシアニン類縁体薄膜の電子状態分析 有機半導体デバイス表面および界面の評価

永 谷  幸 則. 木 村  勇 気 平 澤  祐 介 名 和  豊 春 加 藤  剛 志 橋 本  康 博 平 沖  敏 文 高 見   剛 高 見   剛 西 村   徹 小 野  晋 吾 小 林  将 俊 伊 藤  俊 幸 樋 口  恒 彦. 根 岸  雄 一 塚 本  恵 三. 井 村  考 平 吉 川  浩 史 林   靖 彦 岡崎統合バイオナノサイエンス

センター

東北大学理学研究科 星薬科大学生薬学教室 北海道大学大学院工学研究科 名古屋大学工学研究科 旭化成(株)基盤技術研究所 北海道大学大学院工学研究科 名古屋大学大学院理学研究科 名古屋大学大学院理学研究科 三井化学(株)触媒科学研究所 名古屋工業大学大学院工学研究科 住友ゴム工業(株)

テラベース(株)

名古屋市立大学大学院薬学研究科. 東京理科大学理学部

(株)アヤボ.

早稲田大学理工学術院 名古屋大学大学院理学研究科 名古屋工業大学工学研究科 S E M/F IB .

T E M NMR NMR S E M/F IB NMR NMR S E M/F IB E S C A 分子触媒 S E M/F IB NMR S E M/F IB E S C A . T E M T E M. T E M E S C A 有機半導体 有機半導体デバイス表面および界面の評価

F IB を用いた位相差電子顕微鏡用 A B 位相板の作成と F E -S E M による位 相板の観察

合成高分子の構造決定

ナノ領域の特異現象と 46 億年前の微粒子形成

未利用植物より単離した多環性アルカロイドの構造研究

セメント硬化体内水分子の動的存在状態および A 1 の存在状態の解明 磁気記録用パターン媒体の研究

カルシウムハイドロシリケートの微細構造解析

ワイドバンドギャップ半導体のフォトルミネッセンス(PL )測定 ベンゼンと酸素からのフェノール直接合成用担持レニウム触媒の構造解析

林   靖 彦 永 谷  幸 則. 山 子   茂 木 村  勇 気 平 澤  祐 介 名 和  豊 春 加 藤  剛 志 橋 本  康 博 矢 田 貝 昌 和 西 村   徹 名古屋工業大学工学研究科

岡崎統合バイオナノサイエン スセンター

京都大学化学研究所 東北大学理学研究科 星薬科大学生薬学研究室 北海道大学大学院工学研究科 名古屋大学工学研究科 旭化成(株)基板技術研究所 西進商事(株)

三井化学(株)触媒科学研究所 有機半導体

F IB . NMR T E M NMR NMR S E M/F IB NMR 磁気光学 分子触媒

(16)

5-6 最先端・高性能スーパーコンピュータの開発利用

次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発

(文部科学省)

分子科学研究所は2006年4月より表記の「最先端・高性能スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトにお ける「次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発」拠点としてナノ分野の「グランドチャレンジアプ リケーション研究」を推進している。我々は「次世代スパコン」プロジェクトの一環として,わが国の近未来の学術, 産業,医療の発展に決定的なブレークスルーをもたらす可能性をもつ三つのグランドチャレンジ課題を設定し,その 解決を目指して,理論・方法論およびプログラムの開発を進めてきた。

(1) 次世代ナノ情報機能・材料

. ナノ物質内の電子制御をシミュレートできる方法論を確立する。 (2) 次世代ナノ生体物質

. ナノスケールの生体物質に対して,自由エネルギーレベルでの相互作用,自己組織化,また動的な振る舞いを シミュレートできる方法論を確立する。

(3) 次世代エネルギー

. 高効率の触媒・酵素の設計ができる方法論を確立する。

これらのグランドチャレンジ課題はいずれも従来の物理・化学の理論・方法論の「枠組み」あるいは「守備範囲」を はるかに超えた問題を含んでおり,ただ,単に計算機の性能が飛躍的に向上すれば解決するという種類の問題ではな く,物理・化学における新しい理論・方法論の創出を要求している。さらに,構築が予定されている「次世代マシン」 は従来の常識をはるかに超えるノード数からなる超パラレルプロセッサーであり,プログラムの高並列化を始めとす る「計算機科学」上のイノベーションをも要求している。

「ナノ統合拠点」は上記の三つのグランドチャレンジ課題を解決するために必要な理論・方法論およびプログラム の開発を進めると同時に,その実証研究を進めてきた。2009年度に遂行した主な課題は下記のとおりである。

5-6-1 中核アプリを中心とする「次世代ナノ統合ソフトウエア」開発

我々が開発しているアプリケーションは3つの階層構造から成り立っている。

中核アプリ:ナノ分野の研究にとって基本的な量子力学,統計力学,分子シミュレーションに関する6本のアプリケー ション。

付加機能ソフト:上記6本のアプリケーションを様々に組み合わせて,マルチスケール・マルチフィジックス問題を 解決したり,構造探索を効果的に行なうなどの目的に対応するプログラム群。

連携ツール:「中核アプリ」と「付加機能ソフト」をシームレスに連結するためのツール群および蛋白質一次配列情 報やポテンシャルパラメタなどの初期インプット情報を生成するためのプログラム。(資料1)

(17)

資料1

「中核アプリ」に関する2009年度の進捗状況は下記の表にまとめてある。

表1

(18)

5-6-2  「アプリケーション実証研究」および「連続研究会」

昨年度に引き続き,ナノ分野における「アプリケーション実証研究」および「連続研究会」を実施した。これらの 研究活動は,昨年度,外部評価委員会(魚崎浩平委員長)のアドバイスに基づき開始したものである。そもそも本拠 点は前に述べた3つのグランドチャレンジ課題を解決する目的で「次世代スパコン」上で最大限の性能を発揮するア プリケーション群の開発を目指しているが,個々のアプリケーションは,問題を限定すれば,現在,稼働中のマシン を使用することにより,実験研究者が直面しているいくつかの問題の解決に有効である可能性をもっている。そこで, まず,解決を迫られている「ナノ分野」の課題を抽出するため,大学における実験研究者,企業研究者,および計算 科学者を含む「連続研究会」を電子デバイス,ライフサイエンス,環境・エネルギーの広汎な分野で企画した。この 連続研究会は19回におよぶ。以下の表に,過去2年間の連続研究会の開催状況を示す。その規模と広がりから,研 究者の中に全国的な反響を巻き起こすと同時に,その中からすでに実験研究者と計算科学者の間で,いくつかの共同 研究が生まれ,具体的な成果に結びついている。例えば,「抗がん剤を使わない癌治療法(上岡教授)に関する計算 科学的サポート(岡崎グループ: 上岡教授(崇城大学)との共同研究)」,あるいは,「カリウムチャネルのイオン 選択性に関する 3D -R IS M 計算(平田グループ: 老木教授(福井医科大)との共同研究)は,その例である。

以下に,プロジェクト開始時からの研究成果を表にまとめてある。

(19)

5-6-3 プログラム公開に向けた取り組み

本プロジェクトは国家プロジェクトであり,そこで開発されたプログラムは「公開」を原則とする。一方,本プロジェ クトで開発されたプログラムの多くは過去の履歴をもっており,公開に関しては様々な制約を帯びている。同時に, 本プロジェクトで解決を目指している課題の多くは新規の理論や方法論の開発など基礎研究の要素をもっており,研 究者(開発者)のクレジットやプライオリティが保証されなければならない。現在,「産」「学」「官」の間で,これ らの二つの要素を考慮した「プログラム公開」の原則を確立するための意見調整を行なっている。

5-6-4 今後の課題と取り組み

本プロジェクトは2年後に終了するため,これまでの開発計画を継続しながらプロジェクト完了に向けた取り組み を強めていく。その第1は,本プロジェクトの一義的ミッションである「中核アプリ」および重要な「付加機能ソフト」 の次世代機に向けた高度化および実機での検証である。この取り組みは,「次世代機」稼働前においては T 2Kや F X 上で最大限の高度化および実証研究を行ない,「次世代機」稼働後は可能な限りのノードを使ってチューニングを行 なう。

第2は「アプリ実証研究」および「連続研究会」であるが,これらの活動については,昨年度行なわれた外部評価 委員会からのアドバイスおよび昨年暮れの「仕分け作業」の状況を踏まえて,新たな取り組みが必要である。外部評 価委員会から我々のプロジェクトに対して「キャッチコピーが欠如している」との指摘があった。すなわち,「何の ために『次世代スパコン』が必要か?」,「『次世代スパコン』でどんな素晴らしいことができるか?」という国民の 問に端的に答え得る「課題提示」が必要との指摘である。この指摘は,実は,「仕分け作業」において「仕分け委員」 から「次世代スパコン」プロジェクト全体に対して投げかけられた疑問と軌を一にしている。プロジェクト終了に向 けた,今後,2年間の「アプリ実証研究」において,この問題を解決する取り組みが必要である。

(20)

5-7 最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム

(文部科学省)

文部科学省は,平成20年度より新たな拠点形成事業として,「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点 プログラム」(以下,光拠点事業)を開始した。本事業は「ナノテクノロジー・材料,ライフサイエンス等の重点科 学技術分野を先導し,イノベーション創出に不可欠なキーテクノロジーである光科学技術の中で,特に,今後求めら れる新たな発想による最先端の光源や計測手法等の研究開発を進めると同時に,このような最先端の研究開発の実施 やその利用を行い得る若手人材等の育成を図ることを目的として(文科省ホームページより抜粋:http://www.mext. go.jp/b_menu/houdou/20/07/08072808.htm)」実施される。具体的には,光科学や光技術開発を推進する複数の研究機関

が相補的に連結されたネットワーク研究拠点を構築し,この拠点を中心にして(1)光源・計測法の開発;(2)若 手人材育成;(3)ユーザー研究者の開拓・養成を3本柱とする事業を展開する。

この光拠点事業の公募に対して,分子科学研究所は,大阪大学,京都大学,独立行政法人日本原子力研究開発機構 とともに,「融合光新創生ネットワーク」と題したネットワーク拠点を申請し,採択された(http: //w w w . mex t. g o. j p/ b_ menu/houdou/20/07/08072808/003. htm)。今後,この拠点を舞台に,世界の光科学を牽引する多くの素晴らしい研究 成果や人材が生み出されるものと期待される。なお,この他にもう1件,東京大学,理化学研究所,電気通信大学, 慶応義塾大学,東京工業大学によって構成される「先端光量子アライアンス」と題されたネットワーク拠点が採択さ れており,これら二つの異なる拠点間の交流による新たな展開も楽しみである。

今年度の分子科学研究所における活動内容を以下にまとめる。

(1) 光源要素技術の開発

マイクロドメイン制御に基づく超小型高輝度高品位レーザーの開発,およびこれを励起源とする極短パルス光源の 要素技術開発に着手した。サブ mJ級の数サイクル 2.1 ミクロン光の発生を目指し,非線形光学素子の探索や基礎研 究の展開を行った。特に,世界で初めて,5mm 厚の大口径 P P M g L T (コングルエント組成)の試作に成功し,効率

~70%,出力 118.mJの高効率・高エネルギー OPO(波長 2.1.µm)を実証した。

(2) 供用技術の開発

超高精度量子制御技術では,バルク固体のコヒーレント制御に成功した。また,分子の大振幅の構造変形運動をコ ヒーレントに励起することに成功した。また,これらの制御技術の応用として,分子波動関数を用いた離散フーリエ 返還を実現した。超高速分光技術の開発では,3次分散補償ミラーによるレーザーパルスの高強度化・短パルス化を 試み,6 フェムト秒強レーザーパルスの発生と,これを用いた広帯域高次高調波の発生に成功した。時空間分解顕微 分光では,20 フェムト秒の時間分解能を有する走査型近接場光学顕微鏡システムを開発した。また,本ネットワーク における供用研究の推進に寄与する各種研究会の開催については,「S ymposium. on. Physics. and. C hemistry. of. C oherently. C ontrolled.Quantum.S ystems」と題した国際シンポジウムを,平成22年3月18〜20日に犬山にて開催する。

(3) 人材育成体制の強化

他の参加機関との議論を通じて,次年度以降の教員や学生の具体的な交流方法を検討した。

(21)

5-8 光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発

「量子ビーム基盤技術開発プログラム」 (文部科学省)

量子ビーム技術は,ビーム発生・制御技術の高度化に伴って近年大きく発展してきており,基礎から応用に至るま での幅広い分野で活用されてきている。量子ビームの研究開発を戦略的・積極的に推進するとともに,次世代の量子 ビーム技術を担う若手研究者の育成を図ることを目的として,今年度より「量子ビーム基盤技術開発プログラム」が 開始された。本事業では,基盤技術としての量子ビーム技術の発展と普及に資するべく,汎用性・革新性と応用性が 広い研究テーマについて,ネットワーク研究体制を構築しながら研究開発を行うことを目的としている。

本研究所からは,極端紫外光研究施設を利用した「リング型光源とレーザーを用いた光発生とその応用」という課 題名で提案を行い,採択された。本研究所を中核とし,名古屋大学,京都大学の参画を得て,2008年度より5年計 画で実施する。U V S O R - I I 電子蓄積リングの改造,ビームラインの建設などを含む計画であり,レーザーを用いるこ とで特色あるシンクロトロン光を作り出し,その利用法の開拓を行おうとしている。具体的には,コヒーレントシン クロトロン放射と呼ばれる機構を利用した大強度テラヘルツパルス光の発生,コヒーレント高調波発生と呼ばれる機 構を利用した大強度極紫外線パルス光の発生,また,これらの実用化及び利用法の開拓である。分子科学研究所が中 核となり,名古屋大学では光源技術に関する研究開発,京都大学では利用に関する研究開発を行う。

今年度,分子科学研究所では,2008年度に引き続き UV S OR -II 電子蓄積リング改造のための加速器及び機器の設計・ 製作,レーザー装置の増強などを進めた。2009年度末には加速器の大幅な改造を予定している。既存の実験装置を 用いた光源開発研究も並行して実施するとともに,ビームラインの設計,利用法に関する検討も進めている。2009 年3月には,プログラムオフィサーなども交え,分子研および参画機関のメンバーによる検討会を開催し,今後の研 究の進め方について議論を行った。

参照

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